きままりすと

気儘に言及するブログ

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あの日貰ったお菓子の味を私は一度も忘れたことがない


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もういくつ寝るとバレンタイン♡

 

ということで、長い前置きかーらーの、本当にあったバレンタインの話題。

 

"ガラパゴス"バレンタインによる弊害

周知の事実ですが、「バレンタインは女性から男性に贈り物をする」という行為は日本独特の慣習です。そして、贈り物にチョコレートが選ばれるようになったのは、洋菓子店「モロゾフ」を筆頭に製菓・流通・デパート業界が仕掛けた販売戦略でもあります*1

親愛を込めて贈る「本命チョコ」だけだった存在は、時代の流れと共に変化していきました。別に好きじゃないけど、今後円滑に付き合うための「義理チョコ」。家族に感謝の意味を込めて贈る「ファミチョコ*2」。自分へのご褒美にお高い一品を贈る「自分チョコ」。草食系男子と肉食性女子の象徴とも言うべき「逆チョコ」。そして、仲の良い友達同士で贈り合う……今や本命と肩を並べるほど需要の高い「友チョコ」。

 

余りにもガラパゴス化されたバレンタインが普及した所為なのか、それとも元々この手のイベントに目がない日本人の性質の所為なのか。企業・メディア含めて、押し付けがましく製品を勧めてきます。「こういうの好きでしょ? ん? ほら、チョコ美味しそうでしょ? 食べたいでしょ?」と強く推す様は、まるで女王様か何かですか? と質問したくなるほどです。

しかし、必ずしも皆が皆バレンタインを楽しめる人間ではないということを、強く主張したい。

 

例えば私、束子。はチョコレートが嫌いです。

 

束子。のチョコレート事情

昔は嫌いじゃなかったチョコレート

物心ついた時からチョコが嫌いというわけではありません。むしろ、小学校の低学年頃までは好きでした。特にM&Msとか。あと、麦チョコも好きでした。

 

それからハワイ土産品の定番、マカダミアナッツチョコレートも好きでした。良いお値段するので、本当にお土産で貰った1回しか食べたことないんですけど。

 

というか、このマカダミアナッツチョコレートって、チョコが美味しいというよりは、マカダミアンナッツが美味しいんですよね。他のナッツと同じくカリッとしているのに、含まれている油分が多いから美味しい。身体に悪いものほど美味しいとは、よく言ったものです。

 

チョコレートが嫌いになった日 (※グロ注意)

そんな私が、何故チョコ嫌いになったのか。

きっかけは車酔いです。三半規管が弱かった幼少期、私は車に乗るたびにリバースしていました。家族旅行で山道を走ればリバース。ソフトクリームやステーキを食べた後に乗れば、数分後には未消化でリバース。車内で本を読めばリバース。……リバース率高さは、下記リンク先並みの高さでした。

anicobin.ldblog.jp

しかし、必ず毎回リバースするわけではありません。まっずい酔い止めを事前に飲んでいれば、胸のムカつきが襲来する間もなく目的地に到着出来ました。学校行事で利用する大型バスでは、振りが少なく気分転換の出来る窓側の前の座席を、真っ先に陣取りました。

やがて、リバースの回数を大きく減らすことに成功した私は、「酔い止め飲んでれば大丈夫じゃん!」と気が大きくなりました。酔い止めがあれば、山道だって大丈夫! ソフトクリームを食べた後だって大丈夫! 読書は危ういけど……それ以外は、何やったって大丈夫! と、思っていたのです。

 

家族旅行中に、トリュフを口にするまでは。

 

予想外でした。

ガナッシュのコッテリとしたミルク感。ガナッシュを覆うミルクチョコレートの甘味。さらに周囲に振られたココアパウダーの香りが、酔い止めで大人しくしていた三半規管を刺激したのです。山道を下っていたのも原因でしょう。

家族に迷惑かけたくないと謎の遠慮をした私は、ムカムカ感と一人で戦い続けました。ですが、そう簡単に耐えられるなら酔い止めなんていりません。チョコレート独特の味と香りで増幅したムカムカは、やがて胃の内容物を体外に出すという行為で終息したのです。

 

以来、私はトリュフが嫌いになりました。同時に、トリュフや生チョコのような、ミルク感と甘味がたっぷりで柔らかく、ココアパウダーが掛かっているチョコレートが食べられなくなりました。

その後、年月をかけてミルク感がダメになり、カカオの風味がダメになり、チョコの香りがダメになり、口内で蕩ける舌触りがダメになり……今のチョコレートが食べられない束子。が形成されたのです。

 

チョコレート嫌いにとっての2月14日

チョコレート嫌いにとって、2月14日は地獄といっても過言ではない。いや、正確に言えばバレンタイン商戦が始まった日から、地獄は始まっています。デパートやスーパー、輸入雑貨店に雑貨屋、カフェに至るまで。右を向いても左を向いてもハートとチョコ。チョコチョコチョコ。視覚の暴力と言わんばかりのピンク&茶色の応酬に、追い打ちをかけるように漂ってくる香り高いチョコレート臭。チョコレートだーい好き♡な人には天国のような時期かもしれないけれど、 チョコレートだーい嫌い♡な人には「勘弁してくれ……」と強く訴えたい時期なのです。

店の中だけではありません。私が中学生の頃、バレンタイン当日の給食のデザートにはチョコレートケーキが出されました。年間行事を大事にする姿勢は大変宜しいのですが、バレンタインは別に取り上げなくて良いだろうと苦々しい気持ちになったものです。

 

そもそもの話。「女性から男性に」の文化が崩れなければ、私がこの記事を書くことはなかったでしょう。自分は貰う立場にありませんから、ただバレンタインコーナーに漂うチョコレート臭にひたすら耐えるだけで良かったのです。加えて、胸を高鳴らせながら特定の人に贈った記憶はないので、コレといった甘いエピソードもありません。現在のパートナーは甘い物が嫌いなので、私以上に「バレンタイン? ……地獄だな」と感じています。

では、なぜ書いたのか。それは「友チョコ」が起因しています。

 

手作り重視? 学生間の「友チョコ」事情

丁度私が中学生の頃に「友チョコ」が誕生し、やがてブームになりました。思春期真っ只中。多感で流行りに敏感な私たちは、当然「自分たちも友チョコしよう!」となりました。しかも既製品ではなく、最も簡単な「溶かしたチョコを型に流して、もう一度固める」手法で作られた手作りのチョコです。もしかしたら、今でいう『女子力』アピールだったのかもしれません。女子相手に。

 

その頃には既にチョコ嫌いを発症していた私は、友人からの友チョコを申し訳ない気持ちで一杯になりながら丁重にお断りしていました。食べられない物は食べられないのだから、仕方がありません。当時の私は所謂『マシュマロ女子』だったので、チョコ嫌いなんて俄かには信じがたいという人もいましたが、トリュフでゲ◯った話をすると信じて貰えました。

 

そうすると翌年、チョコ以外の代物を渡されるようになりました。

クッキーやケーキの類です。

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(※画像はイメージです)

 

当時はまだ『クックパッド』なる超絶便利で信用度が高いレシピサイトなんて、ネット上には存在していませんでした。なので、手作りするにはキットを買うか、本を見ながら作るしか方法はありません。恐らく、後者を選択した人が多かったのでしょう。不慣れだけど頑張って手作りをしたと思われる、不格好なお菓子達を貰うことが多くなりました。

チョコは断れても、他のお菓子は断れません。何故なら、クッキーやケーキは大好きだったからです。だって、マシュマロ女子だもの。

 

不慣れながらに作られたお菓子達は、一体どんな味がするでしょうか。……察して頂きたい。少なくとも「まいうー! 味の郵政民営化やぁ〜!」と嬉々として貪れる代物ではなかったのは確かです。けれども私は、そんな手作り菓子達を断ることも、捨てることも出来ませんでした。お菓子達には一切の罪はありません。罪があるとすれば作り手にですが、その作り手は友人達です。必死に作ったんだろうなと考えると、無下にするわけにもいきませんでした。

高校生になると、友チョコは更に盛んになります。友人だけではなく、先輩や後輩までも作って寄越すようになりました。

流石に高校に上がると「お菓子作りがメチャクチャ上手な子」が存在します。余談ですが私の友人にも、お菓子作りが好きすぎて製菓同好会を設立する子がいました。その子が高2のバレンタインに作ってくれた「フィナンシェ」は絶品で、10年以上経った今でも、あの味を超えるフィナンシェにはお目にかかっていません。

世界は残酷なもので、「お菓子作りがメチャクチャ上手な子」は一握りしかいませんでした。どちらかと言うと「作るよりも作って貰う派」「食べる専門系女子」が大半を占めていたのです。にも関わらず『バレンタインだから』の理由一つで、クッキーやらパウンドケーキを作ろうとするのだから不思議です。出来ないなら、作ったことないなら、やらなきゃ良いのに。やっても良いけど、キットを使ってくれれば良いのに。バターが酸化したような風味のクッキーを食べさせられる身にもなって頂きたい。……などと、恨み辛みをいう勇気がなかった私。結局、高校3年間、歪で苦々しい友チョコを受け取り続けました。数年も続くと、手作り菓子へのトラウマのようなものが芽生え始めます。

そして、高校生活最後のバレンタイン。遂に運命的(?)な出来事が起こりました。

 

あの日貰ったお菓子の味を私は一度も忘れたことがない

当時は「こういう時、どんな顔をしたら良いか分からないの」状態だったのですが、告白と共にお菓子を頂きました。お相手は同じ部活の友人、女の子からでした。因みに共学校です。

好意を抱いてもらっているというのは、どんな方向でも嬉しいものです。取り敢えず嫌われてはないって事ですから。告白に応えられるか否かは別として、感謝の気持ちを素直に言葉にしました。ありがとう、好きになってくれて嬉しい。と。本人は告白してどうにかなりたいという期待はしていなかったようで、本当に「ただ気持ちを伝えたかっただけ」のようでした。その証拠に、卒業後も普通に友達の関係を保っています。

彼女からのお菓子も、有難く受け取りました。若干手作り菓子へのトラウマはありましたが、今まで貰った友チョコとは訳が違います。告白と共に貰ってしまったお菓子なのです(束子。は女子だけど)。それこそ無下には出来ません。

帰宅後。私は彼女から貰ったお菓子を開封しました。夕食前にお菓子は食べない家庭環境だったので抵抗感はありましたが、どんなものをくれたのか興味があったのです。「食事前にお菓子だなんて!」と平素なら厳しい食卓の門番も、2月14日だけは見て見ぬ振りをしてくれました。大きさ的にはクッキーだろうなと予想しつつ、少しだけドキドキしながら開けると……

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……ん? 何でしょう、これは。呪いのクッ……いや、『まじない』でもかかっているのかな。じゃなきゃ、こんなにグラデーション鮮やかなクッキーないもんね。うん、きっとそうだ!!

 

という冗談はさておき。下手くそな絵で申し訳ないが、本当に、本当にグラデーションが施されたクッキーを頂いたのです。嘘じゃありません。

原因は分かっています。彼女がやりたかったことも分かっています。

恐らく彼女は、色付けされたデコレーション用の砂糖菓子

 

↑こういうので、↓のようなデコレーションクッキーを作りたかったんだと思います。

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星がいっぱい散らばってる風なやつ。

この手のモノを使う時、飾るのは最後になります。焼き上がりの熱が完全に取れて冷めきったクッキーに、ペン型のチョコ*3を接着剤代わりにて装飾するのです。決して生の生地に乗せて焼いてはいけません。成分は砂糖と着色料なので、焼いたら溶けて滲みます

……なので、つまり彼女がくれたクッキーは『まじない』が施されたわけではなく、乗っけて焼いちゃったってことですね。うん、あるある!

もう見た目だけでトラウマが刺激されて正直投げ出したい気持ちでいっぱいだったのですが、大事なのは味です。味さえ良ければ、見た目の不恰好さは然程重要ではありません。私は勇気を振り絞って、そのグラデーションを一口齧りました。

 

……。

 

…………。

 

齧れませんでした。予想以上に固かったのです。歯を突き立てた瞬間、ガッ!! という音がして、それ以上前に進まなかったのです。歯が立たないクッキーを、あの日生まれて初めて口にしました。

まあ、歯が立たなければ切れば良いじゃないということで。私は家にある刃物の中で、一番刃の大きくて丈夫そうな包丁を一丁借りました。見て見ぬ振りを決め込んでいた母も、私の奇行に流石に見ぬ振りが出来なくなったのでしょう。「何、何なの?」と戸惑い半分好奇心半分な様子で、私のクッキーカットに付き合ってくれました。

小麦粉と砂糖、バター、卵で作られたとは思えないほどの音を立てて切られたクッキーは、真っ二つにされても粉々になることなく、力強い様相でした。その様子は、ちょっとした小石のようで怖かったのを覚えています。その後、数回に分けて一齧り分ほどのサイズに細かくしました。やっと実食です。

 

……。

 

…………。

 

苦い。

そう、苦かったのです。砂糖の甘みもあるにはあるのですが、噛めば噛むほど苦味が増していきます。固い上に苦い。一体どんな仕打ちでしょう。というか、彼女はどんな材料を使ったんだ。やけに甘ったるい経験はありましたが、苦味を感じるのは初めてでした。2口、3口と進める度に、舌をピリピリとした刺激が襲います。母が「もう止めなさい」とタオルを投げて寄越しました。

この日、私は人生で初めて、貰った手作り菓子を捨てました。

 

手作りに不慣れな人に強く訴えたいこと

悪いことは言いません、買いましょう。確かに素敵なお菓子を作れる女の子は凄いです、女子力たっかー! と思います。しかし、無理をして作ることで、チョコ嫌いだけでなく手作りお菓子のトラウマを持つ人間が誕生することを分かって頂きたい。正直申し上げると、これらの経験のお陰で、バレンタインが楽しかったことは一度もないです。

もし手作りにこだわるなら、キットを使いましょう。今日日、お菓子作りキットは沢山あります。クリーム挟んで完成ー! で済む品もいっぱいあります。それらを活用しましょう。あげる側も貰う側も、みんなが幸せなバレンタインを過ごせますように。なむなむ。

 

 

初めてお題に挑戦。今週のお題「バレンタインデー」ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

*1:諸説あり

*2:ファミリーチョコの略称、ファミリーマートのチョコという意味ではない

*3:誕生日ケーキのデコレーションで、文字を書くのに用いられるやつ

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