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『ブログ飯』は本当に「ブロガー推奨図書」なのか


 どうも、束子。です。

 突然ですが皆さん、ブロガーのブロガーによるブロガーの為の教本といえば、どの本を思い浮かべるでしょうか。ちきりんさん? イケハヤさん? かん吉さん? ……プロ・ブロガーの数ほど教本はありますが、中でも思い浮かべやすいのは『ブログ飯』でしょう。名前からしてそのまんまですしね。

 先人のブロガーたちは「オスッ! ブロガーのみんな! ブログでおまんま食べたいなら、これは絶対読んどけよ!」と『ブログ飯』を推薦してくるわけですが、果たして本当に『ブログ飯』は「ブロガー推薦図書」なのでしょうか。

 実際に読んでみたので、今日はそのレビュー記事を書こうと思います。

 

 

『ブログ飯』とは

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 こちらです。恐らくブロガー間では1、2位を争う有名度を誇る本でしょう。

 2013年6月発行の、染谷昌利著「ブログ飯 個性を収入に変える生き方」。『ブログ』『本』『おすすめ』で検索すると、だいたいこの本が出てくる上に、サムネもだいたいコレなので、知らない人を探す方が難しいかもしれない。それぐらい知名度の高いブロガーアイテムです。

 

『ブログ飯』を「ブロガー推薦図書」にして良いのか

 ブログで稼ごう、おまんまを食べようと考えたとき、真っ先に得たい情報はなんなのか。アンケートをとって集計したわけではないので、これは私の妄想でしかないのですが、たぶん「どんなネタを書けば良いのか」だと思います。

 現在、ブロガーが収益を得るために導入しているのは、

  1. Google AdSense
  2. Amazonアフィリエイト
  3. 楽天アフィリエイト
  4. 忍者AdMax
  5. A8.net
  6. その他アフィリエイト

あたりでしょう。そしてその中で多くの人が率先して研究を重ね、日々邁進しているのがGoogle AdSenseです。

 詳しい仕組みについては、この記事を読んでいる人がGoogle AdSenseを利用し始めているブロガー、もしくはこれから利用を考えているブロガーだと仮定しているので割愛──というか、他に詳しく研究結果を記載したブログがあるので、そちらを参考にしていただきたい。

 ただこれから書く内容の便宜上かるく触れさせていただくと、Goolge AdSenseはPV数が稼げれば必然的に銭も稼げる、ブログ飯を遂行するには絶対的に必須な収入源です。

 ブログに書かれた内容とAdSenseの広告内容が一致しなければ、広告をクリックしてもらえる確率が下がるので、どちらかというと専門ブログ向きなシステムと言う人もいます。しかし、数多くの雑記ブログが「今月はAdSenseで20万稼いだよ!」「いやいや自分は30万だったよ!」と定期報告されています。

 その報告には必ずゼロの数が尋常じゃないPV数も添えられているので、月にゼロがいくつも付く程のPV数を稼げれば、雑記ブログでも、新人保育士の月給・一般企業の新卒社員の初任給程度の額は優に稼げるということです。

 

 PV数を稼ぐには、魅力的なネタがなければなりません。言い換えれば、ポジティブ・ネガティヴ関係なく“オイシイ餌”をたくさん散りばめた記事をポンッと提供できれば、その後は勝手にバズって懐がどんどん潤ってくれるのです。

 それでは、どんなネタが“オイシイ”のか。どんなネタで書けば、みんなが食いついてSNSで拡散してくれるのか。そのようなことを『ブログ飯』は一切、解説していません。

 一切、解説していません。大事なことなので2度書きました。

 

『ブログ飯』には即戦力になる情報がない

 ネットで「ブログで稼ぐ方法」を調べてみると、話題になっているネタを取り入れようとか、画像をいっぱい使って読みやすい(文字数がそれほど多くない、流し読みしやすい)記事を心掛けようとか、アイキャッチ画像はインパクトのあるものにしようとか、タイトルには必ず数字を入れようとか、デザインは“WordPress”で洒落乙なものにしようだとか、いや“WordPress”より“はてな”のほうがSEO的に強いから“はてな”を利用しようとか、記事を大量に書こう……最低1日2〜3記事ぐらいとか、ココの一文のようにウンザリするほど多くの情報が出てきます。

 そして初心者ブロガーは情報を信じて実践を試みるわけですが、なかなか簡単には芽が出ません。

 必死にGoogle AdSenseやAmazonアフィリエイトの審査に合格しても、PV数が微々たるものですから稼ぎも雀の涙。キュレーションサイトをライバルとして話題のネタを集約させてみたり、人気ブロガーを真似て執筆してみても、ビックリするぐらい読んでもらえない。うわー! どうしたら良いんだー! ……なんて頭を抱えた頃に、プロ・ブロガーが出版した書籍の存在を知る

「ブログ 本 オススメ」とかで検索をかける

「ブログ初心者必見! 稼ぎたいなら絶対読むべきプロブロガー本5選」みたいな“オイシイ”タイトルが付いたブログ記事を発見

「これを読めば収益が出るかも」(はてな民なら「pro代ペイできるかも」)と思って、その記事のアフィリエイトをポチッとしてチャリンする or 改めてAmazonあたりで検索してKindle版をポチッとする or 本屋に行く。……これがプロ・ブロガー本デビューのオーソドックスな流れだと思います。ようは、テコ入れ目的です。ネットで検索できる範囲のことはやったから、あと何やれば良いんだよ。みたいな。

 

 しかし、残念なことに『ブログ飯』に即戦力となる情報は載っていません。「ネタがなくなった時の探し方」「専門用語を使わない、分かり易い文章の書き方」あたりは使えそうですが、それ以外は「3ヶ月は1日1記事書く」「常に全力を注ぐ」「情報はしっかりとリサーチする」など、至極当たり前のことしか書かれていないのです。

 

『ブログ飯』が「ブロガー推薦図書」リストに載るワケ

 それでは、なぜ即戦力の情報がないにも関わらず、『ブログ飯』は「ブロガー推薦図書」リストに載せられる頻度が高いのか。考えられる理由を3つ挙げてみます。

著者・染谷氏の、ちょっと親しみ深い体験記

 本書は先ず、染谷氏の経歴としてサラリーマン時代の話からスタート。リーマン・ショックをキッカケに勤めていた会社を退職して、ブログ飯を目指すものの、想像したような収入は得られず。減る一方の貯金に焦って利益率の高いブログを「数打ちゃ当たる」戦法で複数運営するものの、鳴かず飛ばずの結果に終わってしまう。ああ、もうダメだ……就職しよ……と思って奥さんに現状を打ち明けたら予想に反して背中を押され、暫くして訪れた「スマホブーム」に乗っかったら、逆転満塁ホームラン! ブログ飯大成功!! という、染谷氏の体験記が記されています。

 この『失敗談』を含んだ体験記が、結構おもしろい。

 ブロガーの金が絡んだ体験記というものは、大概にして「自分は1日に10記事、20記事書いたから収入が得られているのだよ。つまり努力がモノをいうのだ。これを読んでるお前らは圧倒的に努力が足りない」と、伸びた鼻を高らかに掲げてフワッとしたアドバイスをくださるものですが、染谷氏の体験記は、どちらかというと「俺もこれだけ失敗してるから、大丈夫。とりあえず今収益が出なくても、諦めずやってみて」というニュアンスが含まれています。

 『ブログ飯』を読む人の多くは収益が出ていない人だと思うので、この『失敗談』入りの体験記は、本書を手に取った人の心を掌握するのにピッタリです。

鬼嫁の存在がまた良い

 ネタバレになるので詳細は割愛しますが、『ブログ飯』は染谷氏1人が経験して得た結果が羅列されているわけではありません。その影にいる奥さんの存在が、大きく影響しています。奥さんがいなければ『ブログ飯』は誕生しなかったかもしれませんし、存在したとしても本書は「ただの染谷昌利氏の成功談」で終わっていたでしょう。

 鬼嫁の存在があるからこそ、結果的に本書は親しみ深い一冊になっています。どんな影響を与えたのかは、実際に特別コラム(P.238)を読んでください。

ブロガーが書いたからこそ際立つ“読みやすさ”

 プロ・ブロガーが書いたからこそ、全体的に読みやすい文章になっています。なので、初心者にも取っ付きやすい一冊になっています。

 ただ、良くも悪くもブロガーが書いた本なので、「ん?」という部分もあり。こちらの記事「禁断の書『ブログ飯』へのささやかな抵抗 | Love2Labo.com」の最後でも指摘されていますが、いくつか誤植も見られます。発見しても目を瞑ってあげましょう。

小手先テクニックに頼らない、息の長いブログ運営の心構え

 “WordPress”でブログを作ろう、話題ネタで炎上記事を大量生産しようという心構えを、染谷氏は『小手先テクニック』と称しています。そして、それらの小手先テクニックは即戦力となってPV数を稼いでくれますが、非常に短命であると位置付けています。だから一切載っていないのです。

 染谷氏の指す『ブログ飯』が可能なブログは、長期的に一定のアクセス数と金額を叩き出してくれるブログです。そしてそんなブログに必要なものはテクニックではなく、運営する私たちの心構えだと説いています。もちろんテクニックも必要です。でも大抵のブログは、1日2日で結果を出せるものではありませんから、心構えがなければ長く続けることは出来ません。

 その心構えをどのようにして保つか。日常生活とブログを如何にして一体化させるかを、『ブログ飯』では深く記しています。

 

『ブログ飯』は本当に「ブロガー推薦図書」なのか

 何度も言うようですが、 すぐにPV数と銭を稼げる術──元気バクハツの栄養ドリンク的要素は全く書かれていません。それよりも寧ろ、長く稼げるブログを運営するための心構えや、どのようにして基礎を固めるかの方法が書かれています。

 そもそも本書自体、即効性のある栄養ドリンクの役割を果たそうとはしていません。冒頭には、

もしかしたら、この本に書いてある内容が理解できない人もいるかもしれません。「何を言ってんだか、わかんないよ」と。そんな場合は、無理をして読み通そうとは思わず、さらっと斜め読みしたら、本棚の隅っこにでも置いておいてください。そして、まずは、自分自身の力だけで1カ月ほど、ブログを更新してみてください。その後に、改めて、もう一度、本書を読み返してみてください。(中略)私は、本書を執筆するに際して、実践していれば、必ずその時期に刺さるような内容を織り交ぜたつもりです。

引用元:染谷 昌利(著)「ブログ飯 個性を収入に変える生き方」P.12

とあります。 つまり本書もまた長期的に読まれることを目的としており、蔑ろにしてしまいがちな基本の確認と、新たな問題の発見を定期的に行う『健康診断』のような役割を担おうとしているのです。

 

 「時間がかかっても良いからブログで収益を得たい」と考えているブロガーにとっては、『ブログ飯』は正に「推薦図書」です。

 “ブログもアフィリエイトも1日にしてならず”とは、先人のブロガー達が身をもって体験していること。もしかしたら年単位の時間をかけなければ収益は得られないかもしれないという覚悟を持って『ブログ飯』を目指すなら、持っていて損はないと思います。

 「ブログなんかで長期戦はしたくない」「結局ブログで稼ぐには、手っ取り早く炎上させた方が効率良いじゃん」と思っている人は、別に買わなくて良いと思います。私は本書を手にしてから27日間で、本屋での立ち読み1回、購入後の斜め読み1回、注目点のチェックのために1回、この記事を書くために1回、計4回よみましたが、爆発的大炎上させるためのノウハウは読み取れませんでした。なので、1600円(税抜き)は印税に貢献するのではなく、趣味に捧げることを推奨します。

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