身についた『電力自由化』の薄っぺらい知識を、なるべく分かり易く公表することにチャレンジしてみる
この記事の冒頭で述べた『電力自由化』の話。
かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門 [ 江田健二 ] |
今年はマイナンバー制度本格稼働の年であると同時に、『電力自由化元年』でもあります。年明け前から「電気会社を自分で選べます!」「将来的に年間の電気代が安くなります!」と、やたらメディアが騒いでいました。
これを書いている今も、テレビで広瀬すずと妻夫木聡と『副キャプテン自由化』が、「東京ガスでセット割にすると安いよ!!」と、ドン引きするほど宣伝しています。
電気を売る=一大事業なのは分かるけど、高橋陽一に書き下ろさせるとは。お金持ってますなあ。流石、国内最大手のガス会社さんやでぇ……。
電気代は近年、全く宜しくない意味で右肩上がりを続けているので、安くなってくれるのは実に有難いことです。節電だと叫びながら明かりを小まめに消したり、電球をLEDに変えてみたり、冷蔵庫の設定温度を少し上げてみたりなどなど。知識の正誤は兎も角、持ち得た節電方法は恐らく皆さんやり尽くしている筈です。
我が家はやり尽くしました。もう4年近く万策が尽きた状態です。なのに上がり続ける毎月の電気料金。節電前より高い。何故だ、解せぬ。
眉間に皺を寄せ、領収書を睨み続けていたところに飛び込んできた「電気代の値下げ」に繋がる『電力自由化』。
安くなるなら是非に!!と、阿呆のように飛び付きたいところ。
しかし、いざ他会社から電気を買いましょうとなった時に、一体何処から買えば良いのか。全く分からないのが現状です。
というか、そもそも『電力自由化』自体、マイナンバーよりは分かりやすいけど、いまいちピンとこないという人も少なからず居るのではないのでしょうか。
今回は、そんな『電力自由化』の話題で攻めてみたいと思います。
※あくまで世間知らずな素人が、調べて得た知識を忘れない為に綴るメモ書きみたいなものです。専門的な情報は一切ありません。
長くなったので、目次を付けてみます。
- 何故『電力自由化』について攻めるのか
- そもそも、『電力自由化』とは何ぞや
- じゃあ、『新電力』とは何ぞや
- 未来の日本もこうなる? 〜『電力自由化』を先駆けた海外の話〜
- 結局、電力会社は変えるべきなのか?
参考にしたサイトはこちら。
何故『電力自由化』について攻めるのか
キッカケは、特集を組んでいたニュース番組です。
「実際にどれだけ値下げされるのか。シュミレーターがネット上にあるので、試してみると良いかもしれませんね」と紹介されていたので、「へぇ……シュミレーターがあるなら、試してみるしかないっぺ」と思ったのです。
だって、東京ガスが参入とか、TSUTAYAが云々とか言われても、ちょっと分からないじゃないですか。
そもそも現在の電力会社内でも実は色んな設定が出来るらしくて、それを最近知った身としては、いきなり『新電力』と言われても『ファッ!?』なのです。具体的に言えば「……し、新電力って何?新しい発電方法?」な状態。世間知らずにも程がありますね。
ですから、とりあえず何かしらの格安プランを選ぶ前に、年間でどれほど節約になるのか。目に見える形で確認したい。あと、『電力自由化』について、少しでも知っておきたいと思ったのがキッカケです。
そもそも、『電力自由化』とは何ぞや
『電力自由化』とは。電気の買い手側が購入先を自由に選び、契約を交わすことが出来る事です。
……というとメディアで謳われている通りの、あまりにも一般的表現なので電話会社で例えてみましょう。
昔々、 日本には『日本電信電話公社』という国営の特殊法人が存在していて、日本国の通信業務の全てを担っていました。この『日本電信電話公社』というのは、現在のNTT(日本電信電話株式会社)の前身です。
明治元年に電信サービスが開始されて以来、電気通信業務は国の管理下で行われていました。
しかし、昭和60年に法が改定され、『日本電信電話公社』が民営化されます。同時に電話機や回線利用制度が自由化となり、新規参入も認められるようになったので、ソフトバンクの前身『日本テレコム』と、KDDIの前身『第二電電』『日本高速通信』が「電電公社(※日本電信電話公社の略称)より安くて便利なサービスで、顧客ゲットだぜ!!」と旗揚げしたのです。
つまり、昔は強制的にNTTとしか契約出来なかったけど、民営化と自由化で比較・検討した結果NTTを選ばなくても良いという今のサービス重視の競争業務になったのです。
今回の『電力自由化』も、ほぼ同じです。
今までは(言い方は悪いけど)頼んでもいないのに東京電力や関西電力など、地域で決められた電力会社で強制的に契約させられていました。
しかし、今後はライフスタイルや、自分に好都合なサービスを提供してくれる電力会社を選んで契約する事が出来るようになるのです。素敵ですね。
じゃあ、『新電力』とは何ぞや
『新電力』とは、東京電力を筆頭に地方独占を展開している電力会社のライバル的存在です。前述した電話会社の話で言うところの、ソフトバンクの前身とKDDIの前身に当たります。
『新電力』ってどれ位あるの
2015年12月時点で、『新電力』は800社以上も存在しています。
800社もあると、「一体どの会社から選べば良いちゅうねーん!」と思われるでしょう。私もそう思います。東京ガスのように「セット割りプラン」を既に掲げ、契約を受け付けている会社もあれば、まだサービスも未定で受付を行っていない会社もあります。
「早めに申し込みをしないと、4月になってからでは良いプランに入れないかも……!!」と煽ってくるメディアもあります。だからと言って、煽られるがままに焦る必要もないのかな、と私は思います。
何故なら、新電力の中には「完全に太陽光発電に頼っているだろう会社」や「発電実績なし」など「本当に電気の供給が出来るの!?」と疑いたくなる会社も幾つか存在するからです。
『電力自由化』自体は、今に始まったことではありません。今騒がれているのはあくまで低電圧で供給している『一般家庭向けの電気』の話であって、電圧も年間の電気代もめちゃくちゃ高い『企業向けの電気』は数年前から自由化されています。
よって、明確なプランが見えない内は、発電実績があるのか、発電方法は何なのか、家庭向けに供給する予定があるのかを注目するしかなく、その会社が今後何十年も、私達に供給してくれるかは分からないのです。「やっぱ家庭向けはやーめた」と言って事業を辞めてしまったり、最悪、廃業する会社も数多くあるでしょう。
廃業はしなくても、他会社に吸収・合併される会社は幾つも発生するのではないでしょうか。ある程度顧客がいれば、簡単に店を畳むわけにはいきませんからね。
『新電力』を利用して、本当に安くなるのか
最大の疑問はここです。
答えは否であり然りです。
絶対的に安くなる! と言い切れない最大の理由:『燃料』コストに左右される
ここでいう燃料とは、石炭や太陽光等、電気を作り出す為に利用するエネルギー全般を指します。
環境に優しい風力・水力・太陽光で全電力を賄えることが可能であれば、それに越したことはありません。しかし、安定的に電気の供給可能かという点で見ると『燃料』の確保が環境に大きく左右されるのは必須ですから、中々難しいのが現状です。
「地球環境の為に!」と言ったって、私達の快適な生活が安定しないのなら、これらの発電方法は全面的な賛同を得るのは難しいでしょう。晴れなかったから、風が吹かなかったからと言って頻繁に停電になられては困ります。
なので、現在企業向けに電気を販売している『新電力』は、火力発電所を保有しています。
火力発電であれば、基本、天然ガスなどの『燃料』が底を尽きない限り、安定的に電力を供給することが可能です。環境問題への懸念もありますが、昔に比べてかなり改善されているようです。それに、原発よりはずっと安全です。
しかし、火力発電最大のデメリットは、『燃料』の値段が上がったら、必然的に電気料金も上がるという点です。
『燃料』の高コストで言えば、バイオマス発電のように「本来なら捨てるものを再利用して発電する」方法も同じです。この発電方法は『燃料』の確保だけでなく、発電行為にも多くのコストが掛かります。それらは全て私達の支払う電気料金へダイレクトに反映されます。
さらに言えば、『燃料』を輸入する金額や『託送料金』(電気を送る為の必要コスト、宅配で言うところの『送料』に近い存在)は、基本的にどの会社もほぼ変わらないとされています。
つまり、A社、B社、C社が輸入先が同じ『燃料』(例:天然ガス)を使用し、同じ方法(例:ガス火力発電)で電気を作り、同じ送配電網(例:東京電力、8.61円/1kWh)で電気を送電した場合、3社とも条件が変わらないので電気代もほぼ一緒。斗出して激安な電力会社はないということになります。
絶対的に安くなる! と言い切れない最大の理由(番外編):割引済みのオール電化住宅
オール電化住宅こそ、『新電力』を選ぶべきだと思うでしょう。生活の全てを電気に頼っているわけですから、電気代の値上がりに涙している家庭が多いのではないか……とガス+電気住宅の家庭は考えるかもしれません。
しかし、現実は逆です。オール電化住宅は専用料金プランのお陰で、ガス+電気住宅より光熱費が既に35%ほど割り引かれています。
そして、この専用料金プランの恩恵が、『新電力』に乗り換えられない枷でもあります。
そもそもオール電化住宅の促進は、原発による発電で余った電気(特に消費量の少ない深夜時間帯に発生した電気)を安くても良いから売りたいという意向で行われたと言われています。よって、割引も通常価格から10%オフだったり、4割引になっていたりと破格の値段設定になっているのです。
それに比べて、『新電力』の割引率は平均5%となっています。
よって、『新電力』がオール電化プランを設定する日までは、今まで通りのプランで契約を続けたほうが遥かにおトクなのです。
では、何故やたら「電気代が安くなる!」と叫ばれているのでしょうか。
安くなる理由その1:料金制度が違う
輸入先・『燃料』の種類・発電方法・送配電網、全てが同条件だとしても、乗り換え直後の電気代は今より安いでしょう。
……と書くと「おいおい、さっきと言っていることが違うじゃないか!」と脛を蹴られそうですが、上記はあくまで『電力自由化』後、将来的にという話です。自由化が解禁されて実際に乗り換えた時は、数百円単位で安くなると思います。
何故安くなるのか。それは、料金設定が明らかに違うからです。
まず、東京電力等が現在採用している設定方法は『総括原価方式』です。
『総括原価方式』とは
極端に平べったく言うと「今月はこれだけの利益が出るから、目標金額達成の為に◯◯円払って貰います」ということです。
図式で表すと、こういうことです。
↓↓↓↓一般企業↓↓↓↓
目標額を達成、若しくは越えると黒字です。経営が安定し給与が上がり、雇用も増やすことが出来ます。黒字の為に、社畜は必死に汗水を垂らします。ライバル社も数多く存在するので、あの手この手で利益を出さなければなりません。利益を出せなければリストラ大量発生、最悪、経営破綻し倒産です。
上図では、利益が目標ラインに届いていないので赤字です。
↓↓↓↓総括原価方式↓↓↓↓
黒字です。どう見ても黒字です。
当然です。目標達成の為に「これだけ請求しても良いよね? 答えは聞いてない!」と勝手に支払いを強要しているからです。例え支払う人が「家には寝に帰るだけで、電気も真面に付けず家事もしない生活」だったとしても、使用料以上の金額を請求出来ます。
総括原価方式の利益の内訳は『固定資産』と『事業報酬率』3%です。『固定資産』とは、発電に必要な施設・設備を指します。その中には使用済み核燃料も含まれます。
……勘の良い人でなくても、この時点でお気付きでしょう。
そうです。価値の高い『固定資産』増やせば増やすほど、無限に利益幅を増やして目標ラインを高く設定することが可能であり、目標ラインに到達する為に無限に支払額を上げることが出来るということです。大げさに言えば、ですけど。
では、『新電力』の電気設定はというと……。
これです。
一般企業と同じです。発電した電力を売らなければ儲けは出ません。しかも、徴収出来るのは使用された電気分の料金なので、利益を伸ばすには魅惑的なサービスで顧客を得なければならないのです。
安くなる理由その2:セット割りやポイント等の恩恵が大きい
それでは、魅惑的なサービスとは一体なんでしょう。
0.1円でも安く電気を提供したいところですが、上記の『絶対的に安くなる! と言い切れない最大の理由:『燃料』コストに左右される』の最後で述べた通り、激安設定は厳しそうです。
そこで登場するのが、セット割りやポイント付加です。
電気と共に利用者が多いガスや、携帯電話やパソコンなどのネット回線を始めとした『生活に密着した商品と一緒に購入する事で、電気料金もしくは既存の契約を割引にする』戦法が、大手の会社を筆頭に次々と発表されています。
更に、車を利用する人はガソリン代を、旅行によく行く人は旅費を割引にするなど、利用者の生活とニーズに合わせたサービス戦法も予想・発表されています。
『大衆向けで、誰でも多大な恩恵に授かれるであろうサービス』で言えば、楽天スーパーポイントやTポイント、Pontaポイントなどのポイントサービスと電気のセットです。ポイントと電気を結びつければ、電気代の一部がポイントとして還元され、どんどん貯まっていきます。そして貯まったポイントは現金の代わりに買い物などで利用出来るので、結果的には電気代が割引されたことになるのです。
最近では、『早期契約してくれたお客様には◯,000円割引!』など、契約とは別のオマケ的な割引サービスも誕生しています。
これから先、サービス競争……いや、顧客争奪戦はあの手この手で激化していくと思います。ライフスタイルは各々によって異なるので「この会社が良い!」と明言されていないところが辛い点ですが、頑張って地道に比較するしかないようです。
自分に合っていて、長期的な関係を持てる会社との契約を結びましょう。
未来の日本もこうなる? 〜『電力自由化』を先駆けた海外の話〜
さて、話を海外に逸らします。
日本よりも昔。ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国が『電力自由化』を実行した話は、この話題がテレビで放送される度に語られるので、みなさんよくご存知だと思います。
しかし、自由化した話はされますが、その後どのような成果が収められたのかまでは、あまり多く語られることはありません。一体何故なのでしょう。
「海外では普通だよ!」「特にヨーロッパでは、みんなやってるよ!」と言うのであれば、「みんな自由化して、これだけお得な生活をしているよ!」と結果を全部見える化すれば良いのです。そうすれば、なんだか複雑で面倒くさそうだなあ……と渋っている人の重い腰も、軽々と上がる筈……。
では、何故しないのか。
それは、結果的に見ると失敗っぽいから。この一言に尽きるでしょう。
現に、『絶対的に安くなる! と言い切れない最大の理由:『燃料』コストに左右される』に書いた通り、自由化前と比べて電気代が高くなった国はたくさんあります。特にイギリスやドイツでは、電気代が2倍に膨れがったという記録があります。
そして『新電力』も未だに100〜200社ほど存在していて、自由化から20年以上経った今日でも、一体何処と契約を交わすのかお得なのか、大きな話題になることもあるそうです。
かといって、『新電力』が栄えているかと思えば……実際は栄えていないそうです。フランスやイタリアでは旧国営電力会社が未だに大きな利益を得ていて、寧ろ『新電力』よりも割安な価格で提供しているという話も見られます。
更に言及すると、アメリカ合衆国カルフォルニア州の輪番停電(2000年〜2001年)と、ニューヨーク大停電(2003年)。これは『電力自由化』によって発電する力が不足=発電が出来ない=電気がない=停電という道を歩んだ結果だそうです。
日本はアメリカと違い「訴訟の国」ではありませんが、「(ある意味)クレームの国」です。降雪の予想が完全に外れて、「なんで雪降ってないんじゃボケェ!!」と国民がキレたという逸話がある程です。
なので、停電にならないように最善の注意を払ってくると思います。しかし、実際に運用してみないと分からないというのも事実です。
結局、電力会社は変えるべきなのか?
正直に言えば、微妙だと思います。
ある程度調べていくと分かるのですが、「乗り換えて!」と声高々に主張する割には料金プランが発表されておらず(※2016年1月17日時点)、比較の余地が余りないからです。
なので、実際にシュミレーターを使用しても、それほど参考にはなりませんでした。
それに加え東京ガスなどのセット割は、多くが脚注に「4人家族」「40A」と小さく明記されています。今回、束子。家もシュミレーターを使ってみたのですが……家族【禁則事項です】人・30Aでシュミレートしてみても、現在の契約が最安値と出てしまいました。
しかも、Tポイントなどのお得サービスが反映されていない状態でです。
うーん……益々、微妙。
しかし!
特別な割引も必要としておらず、ポイント系もあまり利用していない我が家が電力会社を変えるならば、やはりガス会社や携帯電話会社とセットになっているプランが、一番安全枠なのかなと感じています。
実際に自由化されるまで、時間はまだまだあります。
自分や家族に1番あったプランをじっくりと吟味し、納得した上で契約をするようにしましょう。煽られて焦って契約するのは厳禁ですぞ!